考へるヒント

生活の中で得た着想や感想

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

黒木登志夫『iPS細胞 ― 不可能を可能にした細胞』(中公新書、2015年)

黒木登志夫は、東京大学および岐阜大学の名誉教授で、がん細胞の研究が専門。岐阜大学では学長、そして日本癌学会の会長も務めるなど、日本の医学会のドンの一人と言って良い人物と思われる。本職のがん以外にも医学や研究に関する一般向けの本をいくつか執…

坂井建雄『人体観の歴史』(岩波書店、2008年)

めちゃくちゃ面白い。今年読んだ本の中ではプラトンの各著作に並んでぶっち切りで良い本だった。 人類がその時々で人体という対象をどのように見ていたか、客観的に見ていたかについて考察した本である。一読して印象深かったのは、解剖学の長い停滞であった…

國方栄二編訳『ヒポクラテス医学論集』(岩波文庫、2022年)

ヒポクラテスは古代ギリシャのコス島出身の医者である。医学を魔術やいかさまの世界から救い出し、経験的な科学へと昇華させたことで「医学の父」として認められている。 國方栄二に関しては断片的な情報しか得られなかったが、京都大学の非常勤講師を務め、…