考へるヒント

生活の中で得た着想や感想

書評

本多静六『人生と財産 ― 私の財産告白 ― 』(日本経営合理化協会出版局、2000年)

折に触れて読み返しているバイブルの一つ。適切なタイミングで適切な忠告をくれる本で、凡才が非凡に至るための本である。心構えと実践のバランスがとにかく素晴らしく、書いてあることは全て本多静六が実行してきたことなので説得力が違う。 凡才に対して本…

黒木登志夫『iPS細胞 ― 不可能を可能にした細胞』(中公新書、2015年)

黒木登志夫は、東京大学および岐阜大学の名誉教授で、がん細胞の研究が専門。岐阜大学では学長、そして日本癌学会の会長も務めるなど、日本の医学会のドンの一人と言って良い人物と思われる。本職のがん以外にも医学や研究に関する一般向けの本をいくつか執…

坂井建雄『人体観の歴史』(岩波書店、2008年)

めちゃくちゃ面白い。今年読んだ本の中ではプラトンの各著作に並んでぶっち切りで良い本だった。 人類がその時々で人体という対象をどのように見ていたか、客観的に見ていたかについて考察した本である。一読して印象深かったのは、解剖学の長い停滞であった…

國方栄二編訳『ヒポクラテス医学論集』(岩波文庫、2022年)

ヒポクラテスは古代ギリシャのコス島出身の医者である。医学を魔術やいかさまの世界から救い出し、経験的な科学へと昇華させたことで「医学の父」として認められている。 國方栄二に関しては断片的な情報しか得られなかったが、京都大学の非常勤講師を務め、…

アルベール・カミュ著/宮崎嶺雄訳『ペスト』(新潮文庫、2004年)

初めて読む。 今さら感が物凄いが、新型コロナウイルスが2類から5類へ変わる、ある意味大きな節目を迎えているので、今回の大流行をおさらいしようと思って手に取った。 オランというアフリカの街(正確には北アフリカのアルジェリア国内)で起きたペストの大…

『現代思想 2022年11月号 特集・ヤングケアラー』(青土社、2022年)

『現代思想 2022年11月 Vol. 50-14 特集・ヤングケアラー』(青土社、2022年)さて、何から書いたら良いものやら。スーザン・フォワード『毒になる親』(毎日新聞出版)を読んでいる時もそうだったが、辛く悲しく退屈な記憶にダイレクトに分け行っていくことにな…

野内良三『日本語作文術 - 伝わる文章を書くために - 』(中公新書、2010年)

野内良三は高知大学や関西外国語大学で教授を勤め、フランス文学やレトリックが専門。本書は「実用文」の書き方を教えてくれる1冊である。実用文とは「文系、理系を問わず、実務、職場、学校、学術など多様な場面に対応できる汎用性の高い文章」である。要す…