考へるヒント

生活の中で得た着想や感想

本多静六『人生と財産 ― 私の財産告白 ― 』(日本経営合理化協会出版局、2000年)

 

折に触れて読み返しているバイブルの一つ。適切なタイミングで適切な忠告をくれる本で、凡才が非凡に至るための本である。心構えと実践のバランスがとにかく素晴らしく、書いてあることは全て本多静六が実行してきたことなので説得力が違う。

 

凡才に対して本当に真摯に向き合って忠告をくれるので、「自分もやれるかもしれない」とその気にさせてくれて、本当に励まされる一冊である。

 

「日々の小さな成果、それは一年と積まれ、五年、十年と積み重ねられて、やがては自分の最善の知能と努力を、完全な計画遂行に導いていく。偉人傑士の大業にしても、多くは日々、一歩一歩の努力の集積の上に打ち立てられたもの」(『人生設計の秘訣』)

 

10代は学業、20代は仕事に全てを捧げてきた。その道は間違っていたとは思わないが、常に全力で走り続けるのは不可能であり、いつか爆発する時限爆弾を抱えながら走るような不安に満ちた、自棄的な道のりだった。ものすごい閉塞感があった。しかし、それがわかっていながら他にどうしようもなかったのだ。

 

図らずもコロナ禍とぴったり重なってしまったのだが、色々と思うことがあったので、この3年ほどはそれまでの人生とは全く違うリズムやスタイルで生活をしてみた。個人的にはかなりの挑戦であり、ハイリスクの賭けであった。

 

良いことも悪いことも本当に色んなことが起きて、波乱万丈の3年となった。かなり痛い目に遭ったり、取り返しのつかない大失敗が多くあった。と同時にそれまでの人生の信念や通念を覆すような、目が開かれる発見もあった。私は一度死に、全く新しい人生が始まったような感覚にさえなっている。

 

目的達成のためなら自分の身も犠牲にするくらい、極端に思い詰めた生き急いだ生き方をしていた。自傷的な人生と言えるだろう。「こんな価値のない自分の身など気にしても仕方がない」と諦めていた。「もっとわがままに、自己主張して良いんだな」とわかったのが一番大きく、「もっと自分を大切にしよう」と思えたのは私にとっては革命的であった。

 

この3年間の全てを今後の人生の糧とするために、このあたりで一度見直しておこうと思い、再読した。決算・棚卸しである。